ポリヒドロキシ酪酸 / PHB   詳細説明 

(1)ポリヒドロキシ酪酸(PHB)はケトン体の重合した化合物です。哺乳類はPHBを分解できないため、小腸をスルーして大腸に達し、大腸上皮を覆う粘膜に住む腸内細菌に取り込まれ、その中にある酵素によって加水分解されます。その結果、腸内細菌の中でケトン体が放出され、これが化学変化を受けてエネルギーを発生します。このエネルギーによって腸内細菌が活性化されます。

さらに、腸内細菌で利用されなかったケトン体は大腸管腔に拡散して、大腸上皮細胞を通じて哺乳類の血液循環に入ります。このケトン体は、哺乳類のエネルギー基質として利用されることになります。

 

 

 

 

(2)ポリヒドロキシ酪酸(PHB)は、バクテリアの菌体内にエネルギー基質の素材として蓄積されています。バクテリアがエネルギー不足に陥った時の保険のようなものであると思われます。バクテリアの体積の80%以上がPHBで占められるため、比較的簡単な操作で純化することができます。
殆ど無味無臭である為、イヌやネコたちの嗜好性を満足させるペットフード素材に適していると思われます。

 

(3)ポリヒドロキシ酪酸(PHB)は、腸内細菌の内部にケトン体を産生させて代謝を活性化させることによって、腸内細菌数を増加させる作用があります。これにより大腸内皮の直下にあるパイエル板(大腸だけに見られるリンパ節の特殊構造)において、マクロファージの活動に関わると思われます。

​Plos Bio;2014:12(4)
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(4)ポリヒドロキシ酪酸(PHB) は持続的にケトン体濃度を増加させることができます。

これはもうひとつのケトン供与体と比較すると対照的です。

ケトンエステルは数分以内にケトン体濃度を増加させるのですが、5時間以内にケトン体濃度はゼロに戻ります。これに対して、PHBは6時間後から徐々に増加し少なくとも10時間は持続させます。これはPHBが小腸の消化酵素では分解されずに大腸に到達して、腸内細菌により分解されるからなのです。

​特願 2019-129635

 

(5)ポリヒドロキシ酪酸( PHB )は腸内細菌がファーストターゲットであることはすでに特許で示唆されています。PHBを5%でエサに混ぜて豚に5日間から4週間与え続けると排せつ物の量が増加し、排便の回数が増加することが報告されています。これは腸内細菌の総量が増加することを示すものです。またこの豚の糞便の(あまり良い匂いではない)臭気成分が有意に減少することが示されています。

PHBが腸内細菌に含まれるバクテリアの酵素により分解されることは既に多く報告されています。つまり、腸内細菌の内部でPHBはケトン体へと分解され、腸内細菌を活性化するのです。

これが、ケトバイオティクスの基本的な仕組みとなります。

特願2005-513522

 

(6)

 

(7)

基礎研究で想定されるメカニズムの例 

 ~特許および論文による想定~

再表2005/021013
【0098】大腸内細菌による分解試験 ブタの盲腸に取り付けた付けたカニューレから採取し、Pipes緩衝液(pH6.5)で5倍に希釈後ガーゼでろ過した盲腸内液を用いた。この盲腸内液50mlに、被検試料を0.5g添加した。嫌気雰囲気下(窒素80%,炭酸ガス20%)37℃で24時間培養した。その後、イオンクロマトグラフィーで分析した。被検試料として参考例1で得たβ-ヒドロキシ酪酸重合体の粉末および参考例3で得たβ-ヒドロキシ酪酸重合体を含有する乾燥菌体(ラルストニア・ユートロファ)を用いた。【0099】 イオンクロマトグラフィーによると、両者とも通常盲腸内にある有機酸以外に新しくβ-ヒドロキシ酪酸重合体の分解物に起因する大きなピークが観察され、β-ヒドロキシ酪酸のリン酸エステルと推定された。リン酸は盲腸内液由来と考えられる。更に24時間培養を継続して分析すると、オリゴマーと推測される大きなピークが2本新たに観察された。 分解生成物のピーク面積から換算した濃度からβ-ヒドロキシ酪酸重合体の分解率は参考例1の粉末が約30%、参考例3の乾燥菌体で約50%と推定された。これはβ-ヒドロキシ酪酸重合体の粒子径の差による表面積の差に起因すると考える。

2 / J Clin Biochem Nutr. 2019 Sep; 65(2): 125–131. 2019 Aug 9. doi: 10.3164/jcbn.19-26
Gut microbiota differences in elderly subjects between rural city Kyotango and urban city Kyoto: an age-gender-matched study
On comparison at the genus levels, with urbanization, a significant decrease was observed in Lachnospiraceae families including genus Roseburia and Coprococcus, and significant increases was observed in Bacteroides, Oscillospira, Parabacteroides, and Ruminococcus.

3 / Gut Microbes. 2014 May-Jun;5(3):333-9. doi: 10.4161/gmic.28572. Epub 2014 Mar 18.
Characterization of the 17 strains of regulatory T cell-inducing human-derived Clostridia.
The 17 Treg-inducing strains fall within clusters IV, XIVa, and XVIII of Clostridia
4 / Singh N, Gurav A, Sivaprakasam S, et al. Activation of Gpr109a, receptor for niacin and the commensal metabolite butyrate, suppresses colonic inflammation and carcinogenesis. Immunity. 2014;40(1):128‐139. doi:10.1016/j.immuni.2013.12.007
5 / Int Immunopharmacol. 2020 Jan;78:106087. doi: 10.1016/j.intimp.2019.106087. Epub 2019 Dec 13.
Regulatory T cells in breast cancer as a potent anti-cancer therapeutic target.

 
植物鏡の反射

( 8 )

2020年の麻布大学獣医学部生化学研究室との共同研究により、マウスの乳がんモデルを用いてPHBがガンの成長を抑制することが確認されました。

 

2019年の福井大学との共同研究でPHBの精製方法についての改善策を得ました。

( 9 )


<精製方法>
 培養液から回収した菌体を遠心分離機 (10,000 rpm 、10 min)を用いて蒸留水で洗浄した。洗浄した菌体に蒸留水を加えボルテックスした後、超音波破砕機を用いて15分間超音波破砕した。これをマイクロチューブに分注し、緩衝液とTable 2-3に示す酵素、SDS、または酵素とSDSの両方を加えた後、40℃、1,000 rpmで1時間反応させた。緩衝液は、0.1 M KH2PO4溶液を5M NaOHでpH7に調整したものを用いた。反応条件をTable 2-4に示す。反応後、遠心分離機 (12,000 rpm ,20 min) を用いて反応物を沈殿させ上澄みを取り除いた。ここに、蒸留水を加えボルテックスし、同じ操作を3回繰り返すことで沈殿物を洗浄した。サンプルには菌体濃度 73.2 g/Lの菌懸濁液を用いた。また、酵素とSDSを単独で用いる場合は5 mg添加し、酵素とSDSの両方を用いる場合は各2.5 mgずつ添加した。

 
ウッドフロアダイニングルーム

(10)

《 先行技術からの報告 》~1~

【0116】
軟便・下痢抑制の効果
飼育期間を通して、正常な糞をしたブタは、対照群が12頭中2頭のみであったのに対し、

試験群は12頭中8頭と下痢・軟便の抑制効果が有意に認められた(p<0.05)。
【0117】排泄物からの臭気:対照群の排泄物の方が刺激の強い臭気であった。各臭気成分の測定の結果次のように、試験群において、揮発性脂肪酸が約25%、硫化水素及び全メルカプタン類は40%以上濃度が減少し(表4)、排泄物からの臭気が軽減する傾向や有意差が認められた。
【0118】


 

 

【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
【国際公開番号】WO2005/021013
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【発明の名称】β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体

《 先行技術からの報告 》~2~

(11)

潰瘍性大腸炎の実験

【実施例7】
【0129】
炎症予防作用
使用ラット:Wistar系雄性ラット8週齢
飼料:自由摂取

水:自由摂取          


 

【0130】
飼育:市販固形飼料(ラボMRストック  日本農産工業(株)日本国:神奈川)で3日間施設馴致後試験群と対照群の2群に分け、それぞれの飼料を2週間摂取させた。
  次いで、
Gastroenterology,98,694-702(1990)(引用により本願に含まれる)に記載の方法に準じ、上記対照群と試験群の飼料を、それぞれの飼料からコーンスターチを617g/kgまで減量し、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を3重量%添加した大腸炎誘発飼料に交換してさらに飼育を続けた。
【0131】
  初めて血便が認められた日を記録し、その翌日に固体毎に剖検を行った。血便が観察されなかった固体は14日目までDSS添加飼料を摂取させ15日目に解剖して各臓器の重さを測定すると共に各臓器を肉眼で観察した。また、大腸の組織切片を作製し、光学顕微鏡にて大腸組織を観察した。大腸の炎症の病理組織学的検査としては4段階評価(0:正常、1:点在、2:広範囲、3:全体的)、出血の状況は3段階評価(0:正常、1:局所的、2:全体的)を行った。
【0132】
  DSS投与前の飼料摂取量や増体重に試験群と対照群の間に有意差はなかった。またDSS投与中、対照群が生存した期間中の飼料摂取量や増体重において有意差はなかった。表9に結果をまとめた。DSS含有飼料へ交換した後、対照群では5日目から7日目までに全8頭に血便が始まった。試験群は1頭が7日目から始まったが、試験終了の14日目でも7頭中4頭には観察されなかった。このように血便に関しては7日目以降で有意差が現れた。炎症に関しては、DSS投与でもっとも強く炎症が生じる大腸下部(直腸部)において、有意にびらん(糜爛)および出血の抑制が観察され、予防効果が確認された。

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