ケトン供

ケトン供与体についてまず分かりやすく説明するために「重合度(N)」という概念を定義しましょう。

 

「重合度」とは、分子内にケトン体(またはそれに相当するもの)が何個含まれるのか、

というものです。

N=1とはケトン体(3R-ヒドロキシ酪酸)そのものという意味です。

ケトン体だけでは強い酸(酢酸と同様です)なので、ケトン体のナトリウム塩が用いられます。

​食するには、独特な味が強すぎるでしょう。ですので、フリーのケトン体を用いられることは少なく、

ケトン体を水酸化ナトリウムで中和した化合物を使うことがあります。

つぎにケトンエステル(N=2)ですが、これはケトン体とアルコールとのエステル体です。
この素晴らしいところは、哺乳類の消化酵素で加水分解されるという点です。

すなわち、ケトンエステルを食べるとたちまち小腸で加水分解され、ケトン体をすみやかに増加させることができます。

アスリートの間など一定の場(多くが研究段階)で利用されていますが、独特な味(接着剤のような風味)が特徴です。

これに対して、PHB  / ポリヒドロキシ酪酸(N>1000)は哺乳類の酵素では加水分解されず、腸内細菌の酵素によって加水分解されます。

この場合、ケトン体濃度の増加は大変にゆっくりとしたものです。

しかしその分、持続するという有利な点があります。

ヒトへの認可はまだされていませんが、ペットや産業動物たちの健康維持への利用が期待されます。

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ケトン供与体の分類の基準は、ケトン体が何個放出されるかということです。それは重合度Nという値で示されます。​
 

ケトン体はケトン体そのものを1個放出します。

→→ N=1

 

ケトンエステルは、ケトン体そのもの1個とそれに相当するもの1個。 →→ N=2

生体内で酸化されてケトン体になります。

 

PHBはケトン体が1000個以上エステル結合した重合体です。

→→ N>1000

腸内細菌で分解されて徐々にケトン体が放出されるため、

持続的なケトン体濃度の増加が可能になります。

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「ケトン供与体1:ケトン体塩」
ケトン体(化学式1)は3-beta-hydroxybutyrateとも呼ばれ、有機酸であり、最も主要なエネルギー基質のひとつである。ケトン体は酢酸と同程度の弱酸であるため、通常ナトリウムやアルギニンの塩で用いる。これらの塩は水溶液では、容易に電離する。

ケトン体は弱アルカリ性である小腸の環境では多くはイオンとして存在し、容易に特異的なモノカルボン酸トランスポーターにより体内に急速に吸収される。

ただケトン体そのものを食べるのは得策ではない。ケトン体は単体では強い酸であり、そのまま数十グラムを食べることは強い刺激があり不可能である。ケトン体塩(例:ナトリウム塩)は数十グラムまで食べることができるが、ナトリウム負荷が問題となる。一般にケトン体は非常に親水性が高く、沈殿させることが大変に困難で、塩を沈殿させるためにはノーハウが必要であり、純度の高い製品はコストが高いとされる。

 

「ケトン体の吸収メカニズム」

 血中のケトン体濃度を増加させるためには、ケトン体自体を経口投与することが考えられる。この場合、ケトン体自体は酸性なので、ケトン体のナトリウム塩等が用いられることになる。ケトン体塩は胃の酸性環境の中でフリーの酸になり、小腸上皮にある特異的な輸送体(モノカルボン酸トランスポーター)で体内に輸送され、摂取後数分で体内のケトン体濃度が増加する。

「ケトン供与体2:ケトンエステル」
ケトンエステル(化学式2)の正式名は3-hydroxybutyl-3-hydroxybutyrateであり、カルボン酸を持つ有機酸のケトン体とアルコールのエステル結合した合成化合物である。このエステル結合は小腸にあるエステラーゼで急速に分解されるため、弱アルカリ環境下である小腸においてはケトン体は電離してアニオンの形で存在する。ケトン体と同じく容易に特異的なモノカルボン酸トランスポーターにより体内に吸収される。またエステル結合していたアルコールもカルボン酸に酸化され、ケトン体に変換される。

ケトン体のナトリウム塩ではナトリウム負荷が問題になるから、アルギニン塩などが考案されているがコストがさらに高くなるなどの問題がある。これを解決するため、ケトンエステルが考案された。ケトンエステルは、ケトン体と1,3-ブタンジオールがエステル結合した形である。小腸内の消化酵素で分解されて、ケトン体を生じる。ケトン体は小腸上皮の特異的な輸送体で吸収され、種々の健康機能を発現する。

 

「ケトンエステルの吸収メカニズム」

ケトンエステルのエステル結合を加水分解する酵素は哺乳動物も持っており、哺乳動物は、速やかに(数分以内)ケトン体を高濃度に産生することができる。ケトンエステルは小腸内の消化酵素で分解されて、ケトン体を生じる。ケトン体は小腸上皮の特異的な輸送体(モノカルボン酸トランスポーター)で吸収され、速やかにケトン体濃度を増加させる。ケトンエステルもケトン体塩同様に作用は即効的であり、数分で数mMまで血中のケトン体濃度が増加する。

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「ケトン供与体3:PHB」
PHB (ポリヒドロキシ酪酸, polyhydroxybutyrate ) は、ケトン体がエステル結合でポリマーになった化合物(平均重合度2000程度)であり、このエステル結合は哺乳類のエステラーゼでは加水分解できない。PHBを加水分解できるのは一部の腸内細菌だけであるため、他のケトン供与体とは異なる挙動を示すことになる。またケトン体とケトンエステルは親水性が高いのに対して、PHBは親水性が極端に低いことも特徴のひとつである。

 

「PHBの吸収メカニズム」

  PHBは大腸の腸内細菌のリパーゼでケトン体に分解され、動物の大腸上皮から吸収されて、ケトン体濃度の増加に寄与する作用がある。PHB粉末が大腸の腸内細菌により分解されてケトン体が生成される過程に長時間を要するので、ケトン体濃度が高い状態に維持される時間が、ケトン体又はケトンエステルを経口投与した場合に比べて長いと考えられる。またPHBは最初に腸内細菌で栄養基質になると考えられ、腸内細菌の改善を起点として種々の生理作用を誘導する可能性がある。

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